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液晶の画面はあくまでも冷たく光り、俺の指示を待っていた。 やがて、「失望したよ」とでも言うように、ふっと光を無くした。 アドレスを変更されたのだ。一昨日まで付き合っていた女に。着信拒否も。 ため息も出なかった。真っ黒な画面から、目を離す気力も無かった。 背後で不意にドアが開いた。 「何?またオナニーしてんの?」 姉が立っていた。この上なく意地悪な表情で。 「んな訳ねえだろ!」 俺が声を荒げて反論すると、姉は、あっそう、と言って廊下へ消えた。 「ドアくらい閉めろよ!」 声が、虚しく部屋に響いた。 夕食は俺が作った。冷蔵庫に残っていたものを適当に並べただけだが。 姉と会話は無かった。何度か目が合ったが、無視した。 「お風呂行くから」 姉が席を立った。俺は返事をしなかった。姉は少し俺の方を見ていたが、 やがて風呂に向かった。テレビの中で、若手の芸人が必死に司会者に食らいついていた。 腹は膨らんだが、ようやくため息が出るようになっただけだ。母はまだ帰ってこない。 朝、遅くなると言っていただろうか。会話に集中していない俺がいる。 洗い物をなんとか皿を割らずに済ませ、部屋に戻った。特にすることもない。 パソコンを起動し、2ちゃんねるに行った。VIPで、また安価スレが立っている。 特に書き込みもせず、適当にディスプレイを眺めていた。 「ねえ」 また姉がドアのところに立っていた。 「私の部屋、来て」 「何でだよ、嫌だって」 「ああそう。じゃあ、いいのね?」 「何が?」 「分かるでしょ?」 もちろん分かっていた。口に出したくなかった。 「じゃ、来てね」 行かねばならない。どうしようもない。 画面には、「安価!安価!」と手を振るAAが浮かんでいた。 「…ん…」 姉はあまり声を出す方ではない。 柔らかな陰毛が、鼻をくすぐる。唇が、真っ赤な唇に触れる。 その度に、わずかに姉が震える。もう、湿るというよりは濡れるといった方がいいだろう。 着替えておくべきだった。ジーンズが、みるみる窮屈になっていく。 実の姉にクンニリングスをして、俺は勃起しているのだ。 そう意識すると、とてつもなくいたたまれない気分になる。舌が鈍る。 「やめないで」 息は上がっているが、姉の語気は鋭い。仕方なく、また舌を穴の中に突っ込む。 姉が体を震わせた。股間が痛い。 いっそ襲ってやろうか。それもいいかもしれない。 ―――お掛けになった電話番号は―――― 萎えた。そうだ、この穴を包む下着が、俺を憂鬱にさせたのだ。 しかし舌は止まらない。別に良い味がする訳でもないというのに、 これは別の本能だろうか。 目を閉じているので良く分からないが、姉のそこは相当激しくなっていた。 「…ん…ふっ…あふっ」 舌は加速を続ける。まるで、その先に何かがあるとでもいうように。 「あぁっ…んんっ‥もう止めて」 姉は赤くなった顔で俺を睨んだ。 「さ、ズボン脱いで」 「は?」 「…いいから脱ぎなさいよ」 しぶしぶチャックを下ろした。パンツの上からでも、大きくなっているのは明らかだった。 姉は俺の股間を見ながら、自分の股間に手をやった。 「パンツも脱いで、早く」 最大限の睨みをきかせながら、パンツを下ろした。 恥ずかしいくらいに大きくなったものが露呈する。 姉は指で自分をいじり始めた。まっすぐ、俺を見ながら。 姉の小さく喘ぐ声が、勃起を止めさせなかった。 姉はひとしきり自分で楽しんで、視線を股間から俺の目に移した。 「あんたもオナニーして」 「何言って…」 「ほら、パンティーあげるから」 姉は転がっていた絹の塊をひらひらさせ、俺に向かって投げた。 「ほら、オナニーしなよ、あの時みたいに」 記憶が蘇る。姉の悪魔のような顔、俺に構えた携帯、冷たいシャッターの音。 「…せえ」 「えー?」 「うるせえ!!!!」 急いで服を着て、部屋を飛び出した。姉が何か言っていたが、聞き取れなかった。 鍵をかけ、椅子に座った。上気しているのが、自分で分かった。 パソコンの画面の中では、安価の取り合いが未だに続いていた。 「…これだ」 俺は「スレッド新規作成」をクリックした。戦いの、始まりだった。
少し興奮している。深呼吸した。自分の事でスレを立てるなんて初めてだった。 後悔はしていない。姉になにかやり返してやりたかった。 あの不敵な笑顔を、無くしたかった。
嘘を付いても仕方がない。この板に助けて欲しかった。 誰かに、背中を押して欲しかった。
書いていて悲しくなった。自分を客観的に見るのは、時に辛いものらしい。
キーボードを叩く音が響く。感情が籠もった。下克上を起こしたい。 この生活に、革命を。
飲みに誘え?それでどうなる? 安価は絶対だ、と言い聞かせ、姉の部屋へ向かった。
かなりムカムカしてきた 俺が落ち込んでるのに傷えぐるマネしやがって 何なんだ。自分がしたことの自覚はないのか? まあ食事代を出さなくても良くなったのは良かったが。 しかし、このスレの連中は、予想もしないことを言ってくる。
「鬼才現る」普通に言ってしまった。VIPPERも捨てたものではない。 風呂の中で、水の音がする。憎たらしいほど弾んだ音が。
痛快だった。「勝利」の文字が脳裏に浮かんだ。 ニヤニヤが止まらない。インターネットは素晴らしい。 バ タ ン ドアが大きな音を立てて開いた。
こんなことがあるのか?姉がツンデレ?まさか… 姉の部屋から物音が聞こえる。準備をしているようだった。 案外乗り気なのか?とりあえず安価を出した。
こいつら…… |
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